西郷隆盛が最も頻繁に訪れた湯治場
坂本龍馬が寺田屋事件で手に傷を負った際に妻お龍を伴い霧島の山手の温泉へ出かけていた慶応2(1866)年3月や戊辰戦争から戻って来た明治元(1868)年11月などに訪れた記録がある。明治2(1869)年2月には、藩主の島津忠義がわざわざ西郷に会いに当地を訪れている。
明治政府を辞した明治6(1873)年以降は、明治7(1874)年12月、明治9(1876)年11月に湯治しており、その際には地元の名家である龍宝家の屋敷を間借りして滞在している。また自身の家族を伴って湯治に訪れている。
・所在地/霧島市隼人町
・アクセス/日当山温泉郷:最寄駅JR日当山駅。隼人西ICから車で約15分。溝辺鹿児島空港ICから車で約15分。
・問合せ/日当山温泉旅館組合(霧島市) 0995-42-0607(清姫温泉)
明治3(1870)年4月に訪れた記録がある。明治元(1868)年の戊辰戦争の際、兄弟の中で一人戦死した吉二郎は、伊作の郷士と共に戦っており、悼む気持ちからの訪問であったかもしれない。また湯治のみならず、周辺の山間部の広範囲にわたって狩猟を楽しみ、温泉街から山道へと入った場所には東郷平八郎の揮毫による狩猟場を示す記念碑がのこる。また、近くの坊野地区には腰掛けたといわれる大岩や使用したとされる手水鉢が民家に残されている。
・所在地/日置市吹上町湯之浦
・アクセス/谷山ICから車で約40分。美山ICから車で約30分。
・問合せ/日置市観光協会 099-248-7380
吉田温泉は、現在の宮崎県えびの市の北西に位置する山間部にひっそりと佇む温泉地。かつては、島津義弘がこの地を治めていた頃に訪れている地に、西郷は明治2(1869)年6月に訪れている。それは函館まで戊辰戦争の状況も確認して帰った直後。相当疲労した状態での入浴と考えられる。それ故か入浴後に湯あたりをして発熱、下痢、腫物に悩まされている。ただ西郷自身は、その状態を受け入れ、盟友の桂久武宛の手紙に「大変な思いをしたが、悪いものが全部体内から放出されたようで心地良い」と伝えている。
・所在地/宮崎県えびの市昌明寺
・アクセス/えびのICから車で約10分。JR京町温泉駅から車で約3分。JR吉松駅、真幸駅から車で約10分。
・問合せ/えびの市観光協会 0984-35-3838
えびの市街地からえびの高原へと抜ける道沿いにあり、霧島の山々に囲まれた避暑地としては最高の温泉地。明治7(1874)年の7月に西郷はこの地を訪れている。温泉湯治はもちろんのこと、狩りも目的のひとつであった。しかし、西郷は鹿児島を7月13日に出発した段階で、猟銃を忘れたことに気付き、弟の小兵衛に船便で後から届けさせている。また、この地までの行程では雨にたたられて大変でもあったようだ。それでも長期滞在し、数々の漢詩を残している。夏の滞在だったので、西郷にとっては最高の避暑になったであろう。
・所在地/宮崎県えびの市末永
・アクセス/えびのICから車で約20分。JRえびの駅から車で約20分。
・問合せ/えびの市観光協会 0984-35-3838
訪れた時期は明確ではないものの、西郷隆盛が湯治を楽しんだ際の逸話が数多く伝わる温泉地。この地でも西郷は狩りに出かけたようで、近くの陽成町にはお風呂に入る際に使用したとされる踏み台も伝わっている。また湯治以外には囲碁を打ったと伝わっており、滞在していた民家には使用の碁盤や碁石もあった。他にも腰掛石や狩猟に引き連れた犬の墓など、とにかく面白い逸話の豊富な温泉地で趣のある街並みも魅力だ。
・所在地/薩摩川内市湯田町
・アクセス/最寄駅 肥薩おれんじ鉄道西方駅。西方駅から車で約10分。薩摩川内水引ICから車で約15分。
・問合せ/薩摩川内市観光物産協会 0996-25-4700
明治7(1874)年2月から3月にかけて訪れており、山川港から徒歩で向かっている。この地には、西郷と同様に明治政府で活躍し、同時期に故郷の佐賀に下野した江藤新平が訪れている。
江藤は不平士族とともに決起した「佐賀の乱」に敗れ援軍を求めたが、西郷はこれに応じず、江藤はその後当地で入浴した後に四国において明治政府に捕縛された。
・所在地/指宿市山川成川
・アクセス/JR山川駅、山川港から車で約15分。
・問合せ/指宿市観光協会 0993-22-3252
文久2(1862)年2月、一度目の遠島から帰った西郷が体を癒した温泉。どの施設かの明確な史料はないが、当時は二月田周辺か摺ヶ浜周辺で入浴施設が整っていた。殿様湯はその名の通り西郷が仕えた島津斉彬も訪れた藩主御用達の温泉であった。
・所在地/指宿市
・アクセス/最寄駅 JR指宿駅または二月田駅。
・問合せ/指宿市観光協会 0993-22-3252
明治9(1876)年に訪れている桜島の南側に位置する温泉。江戸時代を通じて桜島を代表する温泉地のひとつだったが、大正3(1914)年1月12日の桜島大噴火によって溶岩が流出し、施設の多くが埋没してしまった。当時、海岸に隣接する場所に湯小屋が並んでいたようで、船着き場とも近く鹿児島から訪れるにも便利であった。現在も海岸線を掘ると足湯程度のお湯を楽しむことができ、また有村町の源泉を持つ施設も営まれている。
・所在地/鹿児島市古里町
・アクセス&問合せ/
[さくらじまホテル]
099-221-2311 桜島港から車で約10分。
[有村海岸での足湯]NPO法人桜島ミュージアム
099-245-2550 桜島港から車で約15分。