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太平洋上に光り輝く深い緑の宝石:奄美大島(鹿児島県国際交流員のコラム )

鹿児島県国際交流員の方による、奄美大島での体験談をご紹介します。
ライター:鹿児島県国際交流員 スノーデン・ジョセフさん(イギリス出身)

鹿児島空港から離陸し、1時間ほど飛行機で南の方向へ行けば、やっと見えてきます。無限の大海原から突出している深い緑の宝石、奄美大島。

甘い風味を持つ黒糖焼酎や世界三大織物の一つと言われる大島紬の本場だけではなく、奄美大島は独特な生態系や生物多様性を持ち、徳之島、沖縄島北部、そして西表島とともに、2021 年に世界自然遺産に登録されました。私は 2022年12 月中旬に奄美大島を訪れる機会を得る事ができ、身をもって奄美大島の魅力を経験することができました。このコラムでは、私が訪問したスポットの印象についてご紹介します。
 

奄美パーク

奄美空港からたった5分離れた場所に、必見の奄美パークがあります。奄美群島の観光拠点施設として、「海の道」、「島の道」、「森の道」など様々な展示ゾーンを通りながら奄美について学ぶことができます。画像、模型、そしてインタラクティブな映像などを組み合わせた展示であり、様々な形で奄美の文化や自然環境を紹介してくれます。なお、展示品前のQRコードを読み取ることで、多言語で展示品の説明を受けることができます。
総合展示ホールのすぐ近くにあるイベント広場では子供向けのクリスマスパーティー、ファッションショーなど様々なイベントが開かれます。

パーク内にある田中一村記念美術館も見逃せません。田中一村は50代になってから奄美大島に移住し、アカショウビンなど奄美大島を代表する野鳥を独特なスタイルで描きました。田中一村記念美術館は作品数が400点以上あり、季節ごとに出展されている作品が変わります。
個人的に言えば、奄美パークの展望台からの眺めが特に印象に残っています。奄美での冒険を始めるには最適な場所だと思いました。

原ハブ屋

奄美大島はハブという毒蛇が有名であり、島内では10万匹が生息していると言われています。この事実を頭の片隅に置きつつ、私は次の目的地に向かいました。
原ハブ屋は1948年に創業したハブの専門店であり、独特なハブの加工品を販売している上に、1日3回ハブのショーを行っています。様々なブランドとコラボをし、高級感あふれる商品が揃っています。

ハブのショーはとても興味深い体験でした。ショーの司会、原武広さんがユーモアを交えながら様々な蛇を目の前で紹介し、ハブ捕りも実演してくれました。ショーは日本語で行われるものの、英語でのショーガイド(説明書)もあります。

私を特に驚かせたのは原さんのある発言でした。「ハブは森の守り神なんですよ。」

この考え方は原さんにとどまらず、私と話してくれた多くの島民が持っているようでした。無論危ない動物とは知っていても、島の生態系を守る存在として島民はハブを大切にしており、ハブに対して尊敬を表しています。

奄美自然観察の森

海岸から離れ、龍郷町の森へ向かうと別世界に入ります。打ち寄せる波の音に代わり木の葉のざわめきやルリカケスの鳴き声が響き渡り、何千年も前の原生林に足を踏み入れたかのような感じがします。ここは、奄美自然観察の森です。

森の館に入ると、奄美大島の独特な生態系を紹介する展示室があります。1~2月にヒカンザクラ、夏に蛍など、四季折々の魅力について楽しく学べます。

展示室を一周してから本格的な森に入ると、自然の中にいる奄美大島の動植物を見ることができました。森に入った瞬間、ガイドさんから「森は五感で楽しむ場所です。」と言われました。

ガイドさんにご案内をいただいたおかげで、野鳥の鳴き声を聞き、「締め殺し木」とも呼ばれるアコウの木の不思議な形を視察し、林床に落ちていたシイの実を食べることもできました。最後に、展望台まで登り、そこに絶景が待っていました。展望台までの道はバリアフリーであるため、誰でも楽しめる場所です。

奄美大島の居酒屋

空が暗くなり、奄美での初日が終わるところでしたが、ホテルに戻る前に私は居酒屋に立ち寄りました。

長命草の天ぷらや油そうめんなどの島料理をいただきましたが、鹿児島本土の料理と同じく、とてもおいしかったです。奄美大島を代表する黒糖焼酎も数種類、水割り・ソーダ割りの異なる飲み方で試飲することができ、その飲みやすさに驚きました。

そして、初日のハイライトとして本格的な島唄を聞くことができました。最初は、ゆっくりと島のメロディーを聞き、ただその雰囲気に浸りましたが、どんどん居酒屋のお客さんが盛り上がり、最後に皆さん(私も含めて)が一緒に「どっこい、どっこい」と歌い、踊りました。その瞬間は、一生忘れないと思います。

フクギ並木・宮古崎

2日目は期待を抱き、朝早く起きました。まずはフクギ並木を視察するために、国直海岸へと向かいました。
国直に到着してすぐに気づいたことは絶景の海辺でした。私は短い散歩だけでも十分楽しみましたが、国直の住民は海辺を広場として扱い、そこで話を共有しながら、一緒に飲んだり、ゲームをしたりするようです。ウミガメの産卵地としても有名なので、海洋生物に興味のある方にもおすすめです。

フクギ並木は海岸に直面しています。フクギは密集しても問題なく成長するため、並べて植えると生きている壁になります!元々は防風、防火林として植えられましたが、今は写真撮影やウェディングフォトに人気の観光スポットです。クリスマスの時期にはフクギの垣根をクリスマスライトで飾り、「フクギナイト」というイベントが開かれます。

フクギ並木を少しぶらぶらした後、北へ向かって遊歩道を通り、宮古崎にたどり着きました。1年中風がとても強く、木が育たないため、代わりに大人の腰の高さまでしか育たないリュウキュウササが一面を覆っています。このため、視界を遮るものがなく、水平線まで見通すことができます!とても不思議で独特な場所でした。

奄美大島世界遺産センター

次の目的地は 2022年7月に開館した奄美大島世界遺産センターでした。多くの人々に奄美大島の世界自然遺産の価値を理解してもらうために造られた総合拠点で、興味を惹かれる展示室とミュージアムショップが整っています。

施設に入るとまず奄美大島在住の絵本作家、ミロコマチコさんが描いた迫力のある壁画が待っています。奄美大島の生態系をテーマにした魅力的なイラストで、子供も大人も楽しめます。
展示室内は奄美大島の森を再現しており、15分ごとに照明の色や壁に映っている映像内容が変わり、昼の森と夜の森を両方鑑賞することができます。奄美大島の動植物の特徴について学びながら、進化の過程は本当に素晴らしいと何回も思ってしまいました。

壁に書いてある説明は日本語と英語で書いてありますし、多言語でのガイド・説明書も配布されており、世界中の人々が楽しめる場所です!

黒潮の森 マングローブパーク(カヌー体験)

奄美大島世界遺産センターのすぐ隣に、日本で2番目に広いマングローブ原生林があります。マングローブパークという施設ではグラウンドゴルフ、セグウェイ体験など、マングローブをいろんな形で楽しめますが、今回、私は奄美大島の定番観光活動、カヌー体験をさせていただきました!

まずカヌー乗り場に歩いて行き、ライフジャケットやパドルを渡されてから、ガイドさんに基本的な漕ぎ方などを説明していただきました。説明はゼロから始まるため、私と同様の初心者の人でも安心して参加できます。そのあと、カヌーに乗り、マングローブのトンネルへと出発しました!

潮の流れで漕ぐ必要はほとんどなく、写真をたくさん撮りながら、ゆっくりと眺めを楽しみました。マングローブのトンネルの到着後に、ガイドさんからマングローブの種類やマングローブパークで見られる野生動物について説明がありました。
マングローブのトンネルはとても不思議で、私が今まで経験したどことも全く異なる、世界の中でもとてもユニークな場所に来たと改めて感じました。マングローブのトンネルの雰囲気に浸り、長くそこにいたかったです!帰りは潮の流れに逆行し、頑張って漕ぎ続けたあと、私はすっきりとした気分になりました。

三太郎崎(アマミノクロウサギ観察)

2日目の夜は島の中心部に行き、アマミノクロウサギという絶滅危惧種を観察するため、三太郎崎を通りました。アマミノクロウサギは道路の真ん中にも出てきますので、事故を防ぐ対策として自動車の台数が制限されており、事前予約が必要ですが、奄美ならではの体験なので本当におすすめです!

ガイドさんのおかげでアマミノクロウサギを6匹ぐらい見ることができ、私は感動しました。なお、その他にも、様々な野生動物の鳴き声も聞こえました。極めて独特な生態系は奄美大島が世界自然遺産に登録された理由の一つで、このように奄美の生物多様性を直接観察することは非常に、重な経験だと思いました。

富田酒造場

3日目朝、まだアマミノクロウサギ観察の楽しみの余韻に浸っておりましたが、奄美を代表する黒糖焼酎を造る富田酒造場を訪れました。この酒造場では「龍宮」や「まーらん舟」など、人気の黒糖焼酎を製造するだけではなく、見学ツアーも提供しています。奄美の黒糖焼酎の蔵元の中では比較的小規模な酒造場で、私は最初から親しみを感じました。しかも、富田さんの説明によりますと、その地域はイギリスとの歴史的な繋がりがあり、私はイギリス人として更に親近感を持ちました。

富田さんの見学ツアーは興味深く、私が以前訪れた芋焼酎の蔵元と比べ、様々な相違点があり、比較すると面白かったです。例えば、焼酎の製法には「仕込み」という工程があり、これは原料が発酵している「もろみ」を造ることが目的です。この工程では原料を甕(かめ)という床に埋められたタンクに入れますが、奄美大島の気候が本土に比べてより暖かいため、ここでは甕の下の部分だけが埋められています。

個人的に言いますと、今回の見学ツアーのハイライトは黒糖の味見でした。沖縄産と奄美産黒糖を両方食べることができ、味には以外と差がありました。富田さんがその違いの原因を説明してくださいました。

「ウィンド・テースト(Wind Taste)」、つまり、黒糖の原料であるサトウキビが育ちながら潮風を受け、味が付きます。ただ、産地によってサトウキビは潮風にさらされる程度などが異なりますので、結局黒糖の味(ウィンド・テースト)も異なります。富田酒造場では、「竜宮」は沖縄黒糖で造られている一方、「まーらん舟」は奄美黒糖で造られているため、両方を試飲することをおすすめします。

最後に、黒糖焼酎のおすすめの飲み方はあるのかと富田さんに質問してみましたが、その返答には驚きました。
「いえ、ただ黒糖焼酎を楽しんでいただきたいので好きなように飲んでください。」
イギリスでは、私はワインをよく飲みましたが、ワインの飲み方についてのルールがたくさんあり、ワインのペアリングなどが重要です。一方で、富田さんは黒糖焼酎を自由に飲み、ストレート、水割り、ソーダ割など自分に合っているスタイルを見つけることをお勧めしてくださいました。その観点は私にとって、黒糖焼酎そのものと同じくさっぱりしているように感じました。

私は富田さんにお礼し、「まーらん舟」を一本買ったあと、最後の目的地へと向かいました。

大島紬村

奄美には昔から伝わった特産物があります。世界三大織物とされる大島紬は光沢を持つ絹織物で、奄美大島に行く機会があれば絶対に見逃せません!
紬でよく使う龍郷柄というモチーフで覆われた看板など、奄美大島の様々なところで大島紬の存在を感じることができますが、もっと知りたい方は大島紬村をお勧めします。
私が大島紬村に到着すると、亜熱帯植物庭園の素敵な花に出迎えられました。奄美を代表するルリカケスの鳴き声を聞き、奄美の冬の始まりの象徴であるリュウキュウアサギマダラを観察しながら、泥染め体験や見学ツアーを待ちました。

ワクワクしながら泥染め体験エリアへ向かいました。泥染めの先生の説明を興味深く聞いてから、私はハンカチを手に持ち、深い茶色の背景に白い花柄というモチーフで染めるために折り始めました。ハンカチを折ったあと、シャリンバイという植物でできた染料を使い、3回染めました。ハンカチは短時間だけ染料に浸っていましたが、意外と濃い赤ワインの色になりました。

そして、泥田へ向かい、柔らかい泥の中にハンカチを埋めました。泥の中の鉄分がシャリンバイの染料に含まれているタンニンと反応し、ハンカチに光沢のある独特なチョコレート色を付けます。ハンカチの出来上がりは個人的に大満足で、奄美の伝統技法によって作ったからこそ得られた、大変貴重な経験でした。

染めたハンカチが乾燥している間、私は紬の製造工場へ入り、紬の緻密な模様を作成するのにどれほど高いスキルや繊細な作業が必要か把握することができました。紬の着物などを手で触ることもでき、特に織物の軽さに驚きました。

地図

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