01.地理
◆ようこそ、南の楽園へ
南北に約600キロメートルとタテに長い鹿児島県は、温帯から亜熱帯まで気候もさまざまです。年間の平均気温は全国2位の19.2℃、年間平均降水量は1900ミリメートルと、一年を通してあたたかく、湿度も高い土地柄。日常の喧噪を忘れ、旅ですべてをリセットしたいとき、南国特有のあたたかな南風があなたの頬にそよぎ、心を癒してくれるでしょう。
◆風光明媚な見どころ満載!
個性豊かな離島の宝庫である鹿児島。その中でも注目したいのが、薩摩半島の西方約30㎞に浮かぶ甑島列島です。南洋に浮かぶ島々とはいっぷう異なるその魅力は、ひとことで言えば、飾り気のない穏やかな空気。紺碧の海を渡って港に降り立つと、岸壁から釣り糸を垂らして獲物を捕る人の姿があったり、こんもりとした山の中には歴史を物語る武家屋敷が残されていたり…。人の暮らしと大自然が調和した甑島エリアには、まるでふるさとに帰ってきたようなあたたかい光景や景色がいっぱい。疲れた心もホッコリとさせてくれるでしょう。
ますます便利になった交通アクセス
2011年3月12日、九州新幹線が全線開業して、博多~鹿児島中央間が最速1時間17分で結ばれました。鹿児島空港への直行便も、国内主要各都市から運行。東京、名古屋、大阪、福岡からは便数も多く快適です。さらに、上海、ソウル、台北の3つの定期国際航空路線が運行しており、アジア各国からの観光客も増えてきています。県内の移動は、あっちもこっちもまわりたいという欲ばり派には、断然レンタカーが便利ですが、鹿児島中央駅を起点に各方面へ向かう鉄道も充実しているので、のんびりローカル列車に揺られる旅もまたおすすめです。
02.歴史
◆さつま隼人のルーツを訪ねて
今からおよそ9500年前、鹿児島のシンボルである桜島が大噴火をおこしました。霧島市にある日本最古、最大級の縄文遺跡「上野原遺跡」では、そのときの火山灰で埋もれた住居跡が発掘され、当時から鹿児島県には人が住んでいたことがわかっています。また、8世紀ごろに書かれた日本でもっとも古い書物によると、鹿児島県を中心とする南九州に定住していた部族は、その昔「隼人(はやと)」と呼ばれ、他の地域と一線を画した独自の文化を育んでいました。霧島市には今も隼人という地名があり、鹿児島人のルーツを推しはかる史跡「隼人塚」が残されています。
◆武士の頭領、島津氏の時代
鎌倉時代になると、武士の島津氏が勢力を伸ばし、中世から近世にかけては島津氏が南九州の全域を治めるようになります。日本の南の玄関口であった鹿児島には、16世紀には鉄砲やキリスト教といったヨーロッパの文化が伝えられ、特に鉄砲は戦国時代という時代背景もあって、またたく間に日本国中へと普及していきました。島津氏は中国と貿易をすることにより、たくさんの利益を得ていましたが、江戸時代に入って幕府から鎖国の命令が出ても密貿易が続けられていました。
◆文明開化の先駆けとなる
江戸時代の終わり頃になると、ヨーロッパの科学技術をいち早く取り入れて産業をおこし、国を強くしようと考えた薩摩藩第11代藩主・島津斉彬によって、鹿児島には大砲や軍艦をつくったり、糸を紡いだりする近代的な機械工場がたくさん建設されました。
また、島津斉彬は、西郷隆盛や大久保利通といった能力のある若者たちを登用し、古い江戸幕府を倒して新しい時代をつくる先駆けになりました。
03.町並み
◆あの名場面が目前に迫る!
中世から近世にかけて、鹿児島の地を治めていた島津氏。19代目の当主・島津光久によって海辺の一等地に建てられたのが、島津家の別邸「仙巌園」です。圧巻なのは、目の前に臨む錦江湾を池に、その背後にそびえる桜島を築山に見立てたなんともスケールの大きい借景。江戸時代には加賀の前田氏、仙台の伊達氏とともに外様大名ビッグ3ともいわれた島津氏の権勢の強さをうかがい知ることができます。
また、仙巌園に隣接している「尚古集成館」は、28代目当主・島津斉彬によって築かれた日本初の近代工場群の遺構。島津斉彬は、NHK大河ドラマで人気となった天璋院篤姫の養父でもあり、仙巌園とあわせてここを見学すれば、ドラマで放映されたあの場面がきっとよみがえってきます。
◆西郷さんに会いに行こう!
地元・鹿児島では「せごどん」の愛称で親しまれている幕末のヒーロー・西郷隆盛。市内には西郷さんゆかりの史跡が数多く残されています。
まずは、生誕地である加治屋町を甲突川沿いに散策する「維新ふるさとの道」。ここには、西郷さんそっくりのロボットが登場して、幕末から維新にかけての歴史をドラマチックに紹介してくれる「維新ふるさと館」があります。西郷さんが政府軍と戦った西南戦争、最後の激戦地となった城山エリアまで足をのばせば、軍服姿の西郷隆盛銅像をはじめ、自決前の5日間を過ごした洞窟が残されています。西郷さんゆかりの地を巡りながら、ニッポンを揺り動かした幕末の群像に思いを馳せてみませんか。
◆薩摩武士の強さの秘密
島津氏が治めた薩摩藩では、領内を113の区画に割り、区画ごとに「麓(ふもと)」と呼ばれる武士の集落がつくられていました。そんな江戸時代の面影をしのばせる武家屋敷群は、知覧、出水、蒲生ほか各地域に残されています。いずれの町並みも碁盤の目状にすっきりと整備され、玉石を積んだ石垣のたたずまいが、慎ましくも頼もしい薩摩武士の気風を漂わせています。
「麓」の武士は仲間意識が強く、教育にも熱心で年長者が年少者に教え諭す「郷中(ごじゅう)教育」が徹底していました。
04.自然
◆大地のエネルギーを体感する
約2万6千年前から噴火を繰り返し、繰り返しして誕生した桜島。以前はその名のごとく錦江湾にぽっかりと浮かんだ「島」でしたが、大正3(1914)年の大噴火によって大隅半島と陸続きになりました。島の東にある黒神神社の鳥居は、そのときの溶岩で埋もれてしまい笠木のみを地上に残し、噴火のすさまじさを伝えています。
桜島は、現在も活動している活火山ですが、フェリーなどで渡ることが可能。溶岩流でできた大地を踏みしめながら、噴煙をあげる火山の様子を間近で観察すれば、地球が生まれた頃の壮大なエネルギーを体感できるでしょう。
◆日本最初の国立公園と霧島ジオパーク
鹿児島県と宮崎県にまたがる霧島山は、「韓国が見える」という言い伝えがある韓国岳(からくにだけ)を最高峰(1700メートル)に、東西22キロメートル、南北18キロメートルの範囲に20あまりの火山が脈々とそびえ、周辺には大浪池をはじめとする火口湖をたたえています。
豊かな自然に囲まれたこの一帯は、四季折々の美しさや雄大で変化に富んだ景観が魅力です。昭和9年3月に日本ではじめて国立公園に指定されました。また、平成22年9月には霧島山を中心とした環霧島地域が「自然の多様性とそれを育む火山活動」をテーマに日本ジオパークに認定されました。霧島ジオパークには、「景観、火山の博物館、植生、歴史・神話」の4つの魅力があります。ぜひ日本ジオパークに認定された霧島ジオパークを堪能してください。
■ジオパークとは・・・「大地の公園」で、地形、地質、植物、文化など全てを学び楽しむ事が できる自然公園のことです。
◆南国情緒たっぷりのドライビングコース
「薩摩富士」とも呼ばれる開聞岳の周辺には、薩摩半島最南端の岬・長崎鼻などがあり、南国情緒あふれるドライビングコースが続いています。
周囲15キロメートル、水深233メートルを誇る九州最大のカルデラ湖(火山の火口が陥没してできた湖)である池田湖には、天然記念物のオオウナギが生息。湖畔では四季折々の美しい花々が出迎えてくれるでしょう。
05.温泉
薩摩半島の南端にある指宿温泉では、地下を流れる温泉によって温められた浜辺の砂に身体を埋める「砂むし温泉」が楽しめます。砂むし場では、浴衣を着たまま砂に仰向けになり、上から砂をかけてもらいます。コリが気になる箇所があれば、その旨を伝えておくと砂を多めにかけてくれます。10分ぐらいすると全身から汗がどっと吹き出して滞った血流もスッキリ! デトックス(毒だし)効果が高いと、女性にも大人気です。
◆散策しながら温泉旅情を楽しむ
山がまるで霧の海に浮かぶ島々のように見えたことから霧島と呼ばれるようになったとの言い伝えが残っているほど、山深い大自然に抱かれた霧島温泉郷。国立公園でもある霧島連山でハイキングを楽しんだ後は、山間に佇む温泉宿でゆっくり旅の疲れを癒してみてはいかがでしょう。
全国的にも名高い霧島温泉郷は、薩摩藩代々のお殿様をはじめ、西郷隆盛や坂本龍馬も訪れたという天下の名湯。昔の人も温泉が大好きだったのですね。
◆県内はどこでも温泉天国!
全国的には指宿、霧島といった二大温泉郷が有名ですが、火山が多い鹿児島県では、良質の温泉があちらこちらから湧き出ています。鹿児島市内にも温泉の源泉がなんと280ほどあり、いわゆる「銭湯」と呼ばれる施設も、そのほとんどが天然温泉という贅沢。価格もリーズナブルなので、地元の人とおしゃべりをしながら入浴すれば、ここぞという穴場スポットを紹介してくれるかもしれません。
06.離島
◆太古の森が残る世界遺産の島
推定樹齢7200年ともいわれる縄文杉など、悠久の時の流れを感じさせてくれる美しい自然が今も残っている屋久島。九州最高峰の宮之浦岳など標高の高い山がいくつもあることから、「洋上アルプス」とも呼ばれています。平成5(1993)年にユネスコの世界自然遺産に登録された屋久島の魅力を満喫したいなら、地元のガイドに同行してもらったり、ガイド会社が主催するエコツアーに参加するのがおすすめです。天候が変わりやすいので、レインウエアは必ず持参してくださいね。
◆海洋リゾート天国・奄美群島
鹿児島から南に約380キロメートル、沖縄とのほぼ中間に位置する奄美大島をはじめ、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島などからなる奄美群島は、ハイビスカスやブーゲンビリアなどが咲く亜熱帯の島々です。美しい珊瑚礁に囲まれた透明度の高い海は、年間を通してダイバーやサーファーたちが訪れるマリンスポーツのメッカ。最近では、島で唄い継がれてきた民謡「島唄」も人気で、本場の唄を聴きに来た若者たちが島の歴史や文化に興味を持つきっかけになっています。
◆鉄砲伝来の島からロケットが飛ぶ
鹿児島から飛行機で約30分、高速船で約1時間半、大隅半島の沖合に浮かぶ種子島は、16世紀に漂着したポルトガル人によって、日本で初めて鉄砲がもたらされた島です。鉄砲はここからまたたく間に日本中へと広まり、「種子島」といえば鉄砲のことをさす代名詞になっていました。
現在では、世界一美しい景観といわれる「種子島宇宙センター」があり、日本最大のロケット発射基地になっています。人工衛星の仕組みや天体観測についてわかりやすく解説してくれる体験施設もあり、夏休みには子どもたちの科学学習の場として賑わいます。
07.グルメ
◆黒豚も、黒牛も、とろけるようなうまさ!
自然が豊かで気候も穏やかな鹿児島県は、日本でも有数の畜産県です。なかでも豚、和牛の飼養頭数は、全国一。特に鹿児島の黒豚は、他の豚肉と比べて脂肪分の溶ける温度が高く、肉の線維も細かいので、「柔らかくて、歯切れがよく、旨味が凝縮されている」と評判です。そんな鹿児島産黒豚を堪能したいなら、何といってもしゃぶしゃぶが一番。定番のとんかつや角煮はもちろん、豚骨スープと黒豚チャーシューが自慢の鹿児島ラーメンもおすすめです。
鹿児島の黒牛もきめの細かな肉質とバランスのとれた霜降り(サシ)が特徴で、しゃぶしゃぶ、焼き肉、ステーキ、etc…。どれもほっぺたがとろけ落ちそうなおいしさです。ぜひ一度ご賞味されては?!
◆郷土料理に舌鼓を打ち、芋焼酎で乾杯!
海に囲まれた鹿児島県は、海産物の宝庫でもあります。キビナゴ、カツオ、トビウオといった南の海で獲れた魚を新鮮なうちにいただけるのは鹿児島ならではの醍醐味。また、魚のすり身を油で香ばしく揚げたさつまあげも、昔から鹿児島では「つきあげ」と呼ばれ親しまれてきた名物です。豊富な海の幸に舌鼓を打ちながら、夜は本場の芋焼酎で「乾杯!」なんていかがでしょうか。
◆暑い夏には欠かせないスイーツ
鹿児島の暑い夏に欠かせないスイーツといえば、色とりどりのフルーツをトッピングしたかき氷「白熊」。その名の由来は、氷にかけていた練乳の缶に白熊印のラベルが貼ってあったからだとか。特産の紅いもを使ったソフトクリームやジュースも夏には人気があります。
また、すりおろしたヤマイモに米粉や砂糖を練り合わせて蒸した「かるかん」や名産のサツマイモを使ったスイートポテトなど、昔から親しまれている素朴な味の銘菓もお土産に好評です。